公開質問状への回答

2008/12/17 掲載

日本哲学会第67回大会(広島大学開催)におけるシンポジウムに関する、会長および委員会への質問状について この度、柿木伸之氏および小田智敏氏の両会員より、表記の質問状が寄せられました。それは、当シンポジウムを批判的に総括したうえで、四項目の質問に対し、回答を求め、その公開を要請するものでした。

会長(高山)ならびに委員会は、これを真摯に受け止め、この質問に回答し、それを公開いたします。

質問ならびに回答

1. 第67回大会シンポジウムの提題者ならびにコメンテーターの人選は、いかなる意図のもとで行なわれたのでしょうか。また、シンポジウム当日における議論の水準を踏まえて、今回の人選はどのような結果と総括されうるのでしょうか。この二点について、人選に関わる責任者の総括文書を求めます。

シンポジウムの提題者およびコメンテーターの人選についてですが、シンポジウムの企画に関しては、それに先だって、初めに、委員会でテーマの選定が行なわれます。その際に配慮されることは、「共同討議」が専門的なテーマを扱うのに対して、「シンポジウム」は、会員が専門分野を超えて発言できるような一般的テーマを取り上げるということです。そして、そのようにして選定されたシンポジウムのテーマに基づき、人選が委員会で行なわれます。具体的には、それはまず、当のテーマをめぐって、著書や論文を公表されている方、社会的に活発な提言を行なっている方、あるいは、日本哲学会の大会などで積極的に発言をされている方等を考慮しつつ、委員や会員、さらには、会員外の方々のなかから、複数名が推薦されます。そのうえで、提題者およびコメンテーター間で、活発な意見交換がなされうるよう配慮し、最終的に、提題者およびコメンテーターの候補者の方々が決定され、その方々に順次登壇の依頼を行ないます。 こうした人選は、もとより、当のテーマをめぐって、哲学的に興味深い提題がなされ、提題者・コメンテーター間で活発な意見交換がなされ、さらには、会場の方々を交えて、多様な討論が行なわれる、ということを意図したものにほかなりません。 ご質問のありました第回大会につきましても、「戦争・平和・暴力」というテーマに基づいて、同様の手続き、ならびに、意図のもとで、人選が行なわれました。 この点で、委員会としては、今回のシンポジウムに、問題はなかったと判断します。

2. 67回大会シンポジウムは、日本哲学会としての企画意図を満たすものであったのでしょうか。私たちは到底満たしていないと考えますが、だとすればそれはどこに原因があったのでしょうか。シンポジウムの趣旨に照らして、今回の提題者などの人選、シンポジウムの場での議論の水準はどうであったか、それらのどのような点を反省すべきか、といった点に関する、日本哲学会委員会としての総括文書を求めます。

今回のシンポジウムにおいて、その企画意図が満たされたかどうかということですが、1.に述べた企画意図に照らすならば、これについても、今回特に問題があったとは思われません。
ただ、今回のテーマに関しては、委員会としてあらかじめ想定した一つの視座がありました。それは、「平和」対「戦争・暴力」という二項対立が、現今、単純に成立しにくくなっているということ、そして、そうした両者のいわば錯綜のうちに、哲学的な視点を見いだしうるのではないかということであります。こうした点からするならば、当日の議論は、たしかに想定どおりに進展したとは言えない面があったと思います。すなわち、むしろ、かの二項対立もしくは二項区分という構図がそのまま前面に出ることともなりました。しかし、討論とは、いわば生き物であり、また、時間的な制約もあり、当日の議論の流れで、こうした経緯となった次第です。
ついては結果的に、委員会のあらかじめの想定が、当日の議論に的確に反映されなかったわけですが、こうした場合にどのように対応していくべきか、また、そのような事態をどのように回避するべきかという点に関しては、今後十分に検討しなければならない課題であると考えます。

3.シンポジウムを大会の場での「やりっぱなし」にしないために、どのような方策をお考えでしょうか。シンポジウムの議論の成果を、今後どのように哲学会会員全員に報告するとともに、社会的にも公表するのか、また今後社会的にも責任ある形でシンポジウムを企画し、その議論を継続深化させていくためにどのような方策を考えているのか、という点についての日本哲学会委員会としての回答文書を求めます。

これまで、シンポジウムの議論の成果を全会員や社会に対し発信するということは、行なってきませんでした。しかし、そうした発信は今後ますます重要になると思われます。この点を踏まえて委員会では、そのための検討委員会を設置しました。そこで、できるだけ速やかに検討いたします。  

4. 200869日付毎日新聞朝刊第9面に日本哲学会委員名で掲載された「日本哲学会シンポジウム「平和・戦争・暴力」を終えて」と題する記事の形式と内容を、日本哲学会委員会としてどのようにお考えでしょうか。また、今後シンポジウムに関する情報の公表およびその意義のマス・メディアでの評価は、どのような経路を通して、どのような立場から行なわれるべきとお考えでしょうか。この二点についての日本哲学会委員会の見解を文書の形で公表してください。  

シンポジウムに関する新聞等への寄稿には、日本哲学会は特に制約は設けておりません。今回の寄稿も個人の判断によっています。また、マス・メディアにおける評価等についても、それに積極的に関与することは目下のところ考えておりません。 

2008128 
日本哲学会会長 髙山守
日本哲学会委員会