会長挨拶

日本哲学会会長就任挨拶

  2019年9月 一ノ瀬正樹

 令和元年5月の新理事会にて会長就任を仰せつかりました一ノ瀬です。前理事会にて加藤泰史前会長の下、編集委員長を務め、『哲学の門』立ち上げ、新査読方法導入、などに携わってきましたので、期が変わりようやく肩の荷が下ろせるかなと思っていた矢先、予想外の拝命となりました。このような事態を予期していなかったので、これまで、日本哲学会理事会の多様な活動のすべてに留意していたわけではありませんでした。それゆえ、初年度は会長としてやや手探りの状況ではありますが、お引き受けした以上、できる限りの誠意を持って職責を果たしたいと決意しているところです。

 思えば、日本哲学会も、天野貞祐を代表として戦後まもなくに発足以来、70年の歴史を積み重ねてまいりました。その間、日本における哲学研究の様子も著しく変貌を遂げ、一般社会での哲学に対する受け止め方も大きく変容してきました。かつては、日本哲学会の研究活動は、おもに西洋哲学史の研究を主軸として、しかも基本的に日本語によって展開されていましたが、いまは、その伝統も確かな形で継承しつつも、すでにその活動範囲を大きく超えてきております。すなわち、他学問領域と交差しながら実社会そして私たちの生活・生命に直結する問題を論じることへの志向性を強め、社会発信力を高めていくとともに、英文雑誌の刊行や対外的な活動を強化しグローバル化を進めつつ、しかも、若手育成そして男女共同参画への努力傾注など、組織内部の今日的改善にも努めているという、そういう状況になってきたのです。学術研究もまた社会の中での人的活動であり、社会なしには成立しえない営為であることを踏まえれば、日本哲学会としても、なるべくしてなってきた近年の動向であると言えます。私たちの責務は、このように芽を吹き、育ちつつある動きを一層円滑に推進し、次世代へと受け渡していくことであります。そのことは、単に私たち哲学研究に携わる者たちの内部的な要請を満足させることだけに関わるのではありません。さらに普遍的に、日本社会が、そして人類が、一層知的に道徳的に成熟していくことに対する一助ともなるはずです。日本哲学会は、そうした高邁な精神に貫かれた学術集団にならなければならないのではないでしょうか。

 現在の日本哲学会の最大のミッションは、前理事会からの受け継ぎ事項である、WCP(World Congress of Philosophy)の招致実現であります。WCPを日本で開催することは、日本の哲学研究を国際的に発信するまたとない機会になるだけでなく、その後の日本における哲学研究の飛躍的な活性化をもたらす事業となることは間違いありません。やはり、哲学研究の進展には、ソクラテスの術を思い起こすまでもなく、多様な背景をもつ人と人とが面と向かい、生の言葉で議論する、という営み以上にまさる方法はありません。日本哲学会は、日本において、そうした対話機会を提供する中核的役割を担っております。こうした自覚のもと、昨年2018年には、哲学系諸学会を含めた、日本哲学会内外の多くの方々のご尽力により、日本が、前回の北京大会の次の2023年WCPの開催地候補に名乗りを挙げることができました。しかしながら、いくつかの事情により、日本は選にもれ、オーストラリアが開催地となりました。私たちは捲土重来を期して、基礎固めに邁進しなければなりません。そのための一つのやり方として、国際研究活動の蓄積、ということがあります。日本哲学会のさまざまな人的つながりを駆使して、小規模な草の根的な活動だとしても、海外において日本哲学会主催の研究活動を繰り広げ、積み重ねていきたいと強く決意しています。それは間違いなく、WCP開催地としての説得性を高めることに寄与していくでしょう。

 また、先に触れた、組織内の若手支援および男女共同参画も喫緊の課題です。若手研究者を日本哲学会全体でもって育成し、支援していくことは、哲学研究が日本にさらに根づいていくためには絶対不可避の案件です。日本哲学会では、この件について、大学院生研究論集『哲学の門』刊行や研究大会時の論文執筆指導セミナー開催などを通じて、すでに多くの活動を遂行してきました。今後も手を緩めることなく、次代の哲学研究の担い手を支援していく覚悟です。さらに、男女共同参画についても、日本哲学会では、前理事会にて、評議員や理事のジェンダー・バランス枠を設定して、学会内部での意識向上を促してきました。時代の要請に沿って、この面での改善もさらに推進していきたいと考えています。

 その他、果たすべきことは山積しています。研究大会時のシンポジウム企画などの一層の充実化、会員の著書に授与する学会賞の創設、また、哲学教育に関連して、哲学カフェやP4C(子どものための哲学)への積極的参画、高校新科目「公共」を通じた高大連携への模索など、日本哲学会として日本の哲学研究振興のために活動することのできる可能性は広がっています。とりわけ、シンポジウム企画は、会員の皆様の直接的な関心事であり、用意周到さが求められています。テーマについて、背伸びをしたり、堅実にしたりという振幅をあえて意図しながら、哲学研究の深化に貢献していきたいと、そして(首都大学東京大会での環境問題に関するような)アップトゥーデートな主題にも視線を向け、社会への哲学研究発信の機会としていきたいと、そのように考えています。

 日本哲学会は、以上のような様々な局面において大きな責任を担っている、社会的影響力の大きい学会です。私としましても、とりまとめ役として、会員の皆様のご意見やアイディアを常時頂戴しながら、たとえ微力だとしても、日本哲学会ひいては日本の哲学研究振興のため、一身を捧げて務めてまいりたいと存じています。会員の皆様のご協力を、そして評議員・理事の皆様のご協力を、なにとぞどうかよろしくお願いいたします。

 最後になりましたが、どのような組織においても、それを実際に運営する基盤となる事務局の重要性はいくら強調しても強調しすぎることはありません。まして、日本哲学会のように、営利団体ではなく任意団体においては、すべてボランティアで運営されています。そのご苦労とご尽力は真に尊いものだと確信しています。事務局長の古田智久さんをはじめとする日本大学文理学部の事務局幹事の皆様方、そして宮前さんをはじめとする事務局スタッフの方々に、日本哲学会を代表して心から感謝を表するとともに、今後もご協力のほどよろしくお願いいたします。
以上、会長就任の挨拶としたいと存じます。

日本哲学会会長 一ノ瀬正樹

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